巻子本「桂本万葉集」(8寸8分8厘×27尺9寸4分  戻る 『桂本万葉集』巻子本 一覧へ 

   金銀泥下絵万葉集(巻第四残巻) (両面加工)昭和初期の模写本

万葉集二十巻(歌数4516首)のうちの巻第四集(歌数309首)の残巻(109首)である。料紙16枚からなる長巻で、ここに詞書、漢文調和歌及び仮名書和歌が494行分が残されている。料紙1枚の行数は28行~36行とまちまちであり、料紙1枚の大きさがほぼ同じなのを考えると態と行間を変えて書いた事になる。真意は如何に。書風は高野切古今集の第二書風(伝紀貫之筆)と酷似、又、平等院鳳凰堂の板壁の色紙形とも同一手によるものと見える。下絵の繊細葦手絵とも云える柄は1枚1枚異なる柄が金銀泥で描かれている。

見返し料紙
  第一紙(灰青緑)         
     白色(しろいろぐびき)   
  古筆臨書 巻子本 『桂本万葉集』 第一紙・巻頭見返し (次へ)  
全長26.9cmx846.5cm 
拡大図
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表紙には灰緑色地に金大小切箔金砂子を万遍に施した装飾料紙が使用されている。
この摸本には、題箋は付されておらず。(実物には「萬葉集紀貫之筆」の題箋あるが、後付されたもの)
現在では平等院鳳凰堂の色紙形により、筆者を源兼行とする説が有力。

この巻子本は昭和初期の模本であり、原本は伏見天皇から幾多の変遷を経て加賀藩主前田家、桂宮家、宮中(現宮内庁)へと伝えられている零本を可能な限り原本に忠実に染めた料紙に模写したものです。(但し、表紙と見返しは敢えて違えてあります。)
拡大図



    
   見返し料紙 花唐草雲母摺装飾料紙           古筆臨書 巻子本 『桂本万葉集』 見返し料紙 (次へ)
見返し料紙部分
拡大図 桂本万葉集


見返し料紙
白色の具引地に白雲母で花唐草を摺り出し、全面に大小の金切箔を散らしたもの。
かなり見辛いですが、ご了承下さい。


     表紙 桂本万葉集(桂万葉集)古筆臨書 巻子本 『桂本万葉集』 表紙(灰緑地金彩) 花押
(伏見天皇)

 表紙 桂本万葉集             縦26.9cmx横25.8cm                      第一紙背

灰緑の地色に金砂子で霞の暈しを施し、大中小の切箔を散らした金彩料紙で作られた物。                         


表紙と第一紙継ぎ目中央付近にあるのが、伏見天皇の花押。花押が半分しかないのは、表紙と第一紙との間に少なくとも1枚分以上の料紙が存在し、後年その部分が抜き取られた証。
 
                      花押(表紙・第一紙背継ぎ目)
古筆臨書 巻子本 『桂本万葉集』 表紙(灰緑地金彩) 半花押部分
 
                    伏見天皇の花押(半切花押)

「此の一軸は芳春院
加賀大納言利家が室なり 年来、所持せり。紀貫之自筆の奥書有。而して、関白秀次公の御所望に依り、見参に入るるの処、端と奥書を截り、手鑑に押さるると、しかじか。(原文は漢文)」
の外箱内裏書在り。果たしてこれがこの時に切られたためのものであるのか、将又それ以前に既に半切と成っていたのかは計り知れないが、何れにせよ同様の理由によってもたらされた物であろう事は、想像に難くない。

同様に巻末も半花押と成っている。又、第九紙と第十紙の継ぎ目では花押に若干のずれが生じている。(この間の和歌586~737の152首分が欠落していることからこのずれとも対応する。ちなみに、巻首の欠落は45首、巻末の欠落は3首である。)

尚、栂尾切万葉集は幾つかの片葉が存在するが、何れもこの巻第四集の断簡である。
栂尾切の名の由来は明らかでないが、この地名の一帯には、鳥獣戯画絵巻で有名な高山寺がある。(寺からの栂尾切の発見の報は無いが、遠い昔或は和尚が秘密裏に換金したのかも?)

 
                          花押(紙背第十四紙・第十五紙継ぎ目)
古筆臨書 巻子本 『桂本万葉集』 (第十四紙・第十五紙継ぎ目) 花押部分
 
                           伏見天皇の花押(通常はこの状態)

水グレー色に見えるのが第十四紙背、その右側に見えるのが第十五紙背、継ぎ目部分中央やや下寄りに見えるのが花押。お気づきと思われるが、継ぎ目毎に花押の縦位置が少しづつ違えてある。(花押は勿論、散逸を防ぐために設けるものだが、後年ばらして修復する際の錯簡を防ぐための物でもある。)

写真では金銀の下絵が輝いておりませんが、文字を見易くする為です。ご了承下さい。(手に取ればちゃんと金銀に輝いて見えます。)